このあと、我々には過酷な現実が、突きつけられることになるのです。
そのあたりの様子はまた日を改めて。
と、予告していた25ガーディアン。
過酷な現実って、なに?と思っていた方もおられるかもしれません。
問題解決の道筋が整ったので、オーナー様のご了解の上で、公開します。
搬入されてきたとき、米軍が「燃料タンクに水を満載にしてある」という謎の行動を聞いていたので、エンジン取付作業の工程の中、「燃料タンクの水を抜く」という作業が入りました。
満載されていた500Lほどの水を抜いた後、燃料タンクの内部を確かめてみたら・・・
タンクの底に、穴が開いているじゃないですか!
わずか20~30㎜程度の長さの穴ですが、確実に燃料が漏れるし、船底に水がたまるとタンクに逆流してきます。
1990年代後半に製造された艇。
保管状態によっては、アルミ製の燃料タンクの腐食が起こっていることは、想定の範囲内ではあったので、半ば「やっぱりなぁ」という心境でした。
ですが、この巨大な600L近い燃料タンク、これを取り外して交換するとなると、さて、どうしたものか。
土埃のような、腐葉土のような、年季が入った堆積物の陰には、ボストンホエラーの高気密なウレタンが、びっしりと充填されています。
燃料タンクの上には、デッキを支えている横方向の桟が入っているので、これもいったん取り外さないといけません。
留めはタンクの前方とコンソール(操船用のボックス)の位置関係。
コンソールが取り付けられているデッキ板をはずさないと、タンクを取り出せないのです。
これには、しばし唖然茫然。
さてこの重いパーツ全体を、いったいどうやって移動させよう。
そして、移動させたとしても、ウレタンでがっちり保護されている燃料タンクの取り外しは、ちょっと考えただけでも相当苦戦しそうです。
そこで閃いた!
(重いコンソールごとのデッキを運び出す作業から、如何に逃れようとかと考えた結果ですが)
どっちみち、穴が開いて使えない燃料タンクなのだから、切断して細かく分けて取り外そうと。
切断を始めてみたら、タンクとインナーハルとウレタンが密着しています。
これは細かく切ったとしても、タンクだけを上手に取り外すのには相当な技術と根気がいる作業。
タンク全体を取り出す計画は、一から見直した方がいいんじゃないか?
ちなみに、切断作業を始めてわかったことですが、タンク内は、大量の燃料がグラグラと移動してしまうことを防ぐための隔壁が何枚か設けられていて、燃料移動による艇の傾きを防止する安全策がとられていました。
大容量の燃料タンク内を、走行中に燃料が前後左右に自由にうごいてしまうと、それだけで走行姿勢や静止状態の艇のバランスを悪化させてしまいます。
そんな構造になっているとは、長年ボストンホエラーを扱っていても知ることはありませんでした。
さてさて、計画変更ミーティングの結果。
隔壁も取り去った状態のタンク。
こうすればタンクは大きなお椀状となるので、このお椀の中に新しい燃料タンクをおさめてしまおう、という計画になりました。
タンクの中を見る、という経験は、こんな作業でもない限りなかなかできることではないので、ボストンホエラーの性能の一部を再確認するうえでも、貴重な体験となりました。
燃料タンクシリーズは、まだまだ終わりが来ませんよ。次回もお楽しみに!
Enjoy Your Boat Life