船もエンジンも機械ですから、定期的なメンテナンスが必要なことは、皆様もよくご存じだと思います。
定期的メンテナンスをしっかりしていても、ある時急に起こるアクシデントもあるのは事実です。
頻繁に乗っている場合でも、急に発生するトラブルもあります。
今日は、そのようなケースをいくつかご紹介させていただきますね。
ある時急に、ガソリンが!
定期的に出航して、帰港後はエンジンの真水洗浄もかかさないオーナー様、釣り用に使用している補機20HPから、じわじわとガソリンらしき液体が漏れているのが、上架後の洗浄中に見つかりました。
ガソリンだと重大インシデントにもつながる恐れがあるので、すぐさまカバーを外して点検すると、サイドカバー内側にある燃料ポンプにつながっている燃料ホースのクリップが、経年によりさび付いてホースを締めるチカラがなくなり、そこからガソリンが漏れていたのです。
釣りのためのボートコントロールに使用している補機、メインエンジンより海水面に近い場所にあり、後ろからの波や飛沫を受け続けることで、クリップに錆付が生じてしまいました。
暖気中にオイルが!
2か月ほど前に定期検査を受検し、その際に陸上試運転を行ったときはエンジン本体にはなんの異常もなかったケース(スクイーズポンプに亀裂があり、それは新品交換済)。
オーナー様が出航準備でエンジンをかけ始めたところ、エンジンカバーの隙間からオイルがぼたぼた垂れ始めてしまいました。
DF140の旧型タイプは、オイルフィルターの取り付け部分に、オイルクーラーがあるのですが、そこが割れてしまってオイルがあふれてしまったのでした。
幸い、異常を感じたオーナー様がすぐにエンジンを止めて、連絡をくださったので、エンジン本体には影響はありませんでした。
原因は経年劣化と思われます。北海道などの寒冷地では、クーラー内部の冷却水が凍ることで膨張してしまって、破損につながることもあるそうですが、温暖な真鶴は考えにくい。
黄色の線で囲んだのがオイルクーラー、真ん中あたりに横にヒビが走っています。
陸上で暖気を始めた時にオイル漏れが起こったので、事故や遭難につながらずに済みました。
沖で起きていたらレスキュー事案です。
オイルの除去も行わないといけないので、ボート保険に入っていれば保険でオイル除去費用が保証される場合があります。
冷却水がアツい!出ない!
冷却水の検水口から水の出が悪く、しかも熱を帯びていて、プロペラ真ん中からの水の出も悪いとき、インペラの劣化、破損などが第一に考えられます。
メーカー推奨では2年に1度の交換をお勧めされているゴム製品です。
数年交換していない場合は、迷わず替えたほうがいいでしょう。
今回は、インペラの他に冷却水検水口の奥にあるホースにゴミが詰まっていたことも、原因の一つでした。
インペラを交換しておくと、副産物のメンテができます。
ロアーケースを外すと、ドライブシャフトもフライホイールから外すわけですが、再度組み込むときにしっかりグリスアップするので、その部分のメンテナンスにもつながる一石二鳥です。
バッテリーケーブルやターミナル
エンジンがかからない、バッテリーは充電されているのに、セルの回りが悪い、1番と2番のバッテリーで始動の具合が異なりおかしい。
エンジンの調子が悪い、かかりが悪い、エラーが出るなどといったエンジン自体の不調を改善しても、この場合、改善しない現象がありました。
1番バッテリーだと正常にかかるけれど、2番バッテリーを使うとセルモーターの回りが悪く、ぎぎぎぎ、という聞きたくない音がします。
海上係留のためか、日ごろのメンテナンスがあまりされていなかったためか、メインとなる太いバッテリーケーブルの何本かと、それを繋いでいるターミナル類のほとんどが、腐食していました。
エンジン始動には大容量の電流が流れます。
しかも安定していないとダメです。
エンジン自体に異常がない状態を確認しているので、各部の配線を徹底的に見直しました。
磨いて緑青を落とすお手入れを行いました。
良い状態に保っておくことで、不調を回避することができます。
見違えるように始動状態がよくなり、副産物としても各部電源ケーブルの配線状態を大きく改良することができました。
誰が見てもシンプルでわかりやすい配線にすることで、今後のメンテナンスもやりやすくなると思います。
安心してボート遊びを楽しんで頂くために、少しの不調も根気強く治していきます。